2020.02.10
VR(バーチャル・リアリティ)認知症出前講座
寒い日が続きますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
ある日の昼下がり、オレンジカフェのスタッフさんにお集まりいただき、VR(バーチャル・リアリティ)を使った勉強会を開催しました。講師として、県庁長寿福祉課の池畠さんをお招きし、認知症とはどのような病気か、どんな症状があるのか等、病気の基礎を丁寧に教えていただきました。その後、VR機材を用いて、2つの疑似体験を行いました。
ひとつめは、「ここはどこですか」というコンテンツ。電車に乗っていて、ふとどこで降りるのかわからなくなる状況を体験しました。「ここがどこなのか聞きたいけれど、降りる駅もわからないし聞けない。見慣れない景色が広がっている車窓を見て、不安と焦りだけが募っていく。」このような状態は、知らない土地に出掛けたときに感じる気持ちとよく似ているなあと感じました。
ふたつめは、認知症と診断されたおじいちゃんを取り巻く家族の対応を、おじいちゃんの視点で体験出来る「やすおじいちゃん物語」というコンテンツ。物忘れが始まったおじいちゃんを責める家族と、優しく受け止める家族の2パターンを体験しました。認知症の周辺症状は、患者本人の不安や焦りから来るものであり、周囲の環境でこんなにも変わるのだということを実感しました。
また、「やすおじいちゃんの息子物語」も視聴しました。おじいちゃんへの愛情は変わらないはずなのに、なぜきつく当たってしまうのか、なぜ優しく接することが出来るのか。息子さんを取り巻く環境に重ね、息子さんの視点で体験しました。会社や地域の人から責められ、怒られたりするばかりの息子さん。そのしんどさが、ついおじいちゃんへの言葉遣いや態度に出てしまい、おじいちゃんを追い詰めてしまいます。追い詰められたおじいちゃんは、周辺症状が酷くなっていき、また、息子さんの注意する言葉もどんどんきつくなっていく…、そんな負のループに陥ってしまいます。息子さんを取り囲む人たちが、少しでも息子さんをいたわってくれていれば、結果が違っていたのに…、と思う映像でした。
体験したことのないことや共感することが出来ないことを、人は嫌がる傾向があります。認知症に対しても、そう。
病気に対する知識や理解が広がれば、認知症の患者さんやその人を支える家族も、ちょこっと暮らしやすくなると思います。
「認知症になっても、不安はあるが、不幸ではない。」
これは、ある認知症の患者さんの言葉です。
認知症と聞くと、「家族がかわいそう」「なにも出来なくなる病気」「こんな病気になったら、人生終わり」と悲しい言葉を投げかける人が、この社会にはまだまだおられます。
ただ、“認知症”という病気になっただけ。
風邪や胃腸炎と同じで、誰もがなる、ありふれた病気です。
病気についての正しい知識を持ち、認知症の人やその支援者を優しく包み込み、あたたかく見守る、そんな社会になればいい、いや、していかなければならないと思います。